記憶とは?
理学療法学事典(医学書院)によると
「経験や情報を記銘(覚えること)し、それを保持(記銘した状態を保つこと)し、再生(必要となった時点で思い出す)し、再認(それが間違っていないかを確認)する心理過程。」とされています。
記憶の分類
短期記憶(短時間の記憶保持)
ワーキングメモリー(作業記憶) 作業を行いながら、ほんの数秒~数十秒だけ覚えているもの。
例:計算ドリルを電卓を用いて計算する(式を覚えておいて計算機に打ち込む)
長期記憶(長時間、長期間の記憶保持)
陳述記憶(宣言記憶:出来事や事実のように言葉で述べることができる)
- 意味記憶 言葉の意味を始めとした、学習によって得られた(知識的な)記憶
例:リンゴは果物である、漢字の読み方
- エピソード記憶 「いつ、どこで、だれが、何をした」のように、経験やイベントの記憶
例:朝ごはんはパンを食べた、昨日は家族でキャンプへ行った
非陳述記憶(作業や運動技能などを自動的に再現できる)
- 手続き記憶 動作や技能など、体で覚えた作業記憶
例:自転車の乗り方、サッカーボールの蹴り方、スキーの滑り方
記憶障害
健忘症
健忘とは、一定期間内の時間的あるいは内容的なことを追想できないことをいいます。ある期間のことを全て思い出せないのを全健忘、部分的に思い出せないものを部分健忘といいます。
部分健忘においては、以下の2種類に分けられます。
前向性健忘(記銘障害)
発症後(受傷後)、新しいことを覚えることができない。
逆行性健忘(想起障害)
発症前(受傷前)のこと、特に時系列的に最近のことが思い出せない。
健忘に関しては、精神疾患、頭部外傷、ヒステリー、意識障害、薬物の副作用などでみられます。
認知症
認知症の定義(国際疾病分類第10版:ICD-10より)
「通常、慢性あるいは進行性の脳疾患によって生じ、記憶、思考、見当識、理解、計算、学習、言語、判断等多数の(高次脳機能の障害)からなる症候群」 とされています。
認知症は、わが国の高齢者において介護が必要となった原因の第一位です。
「超高齢化社会」である現在、医療職種のみならず、国民全体が認知症についての理解を深めておく必要があると思われます。
また、近年、認知症の前駆段階であるMCI(Mild cognitive impairment)も注目されています。
MCI(Mild cognitive impairment)の定義(WinbladB,PalmerK,KivipeltoM,etal)
「本人および第三者(家族等)から認知機能低下に関する訴えがあり、認知機能は正常ではないが認知症の診断基準を満たさない状態であり、基本的な日常生活は保たれているが、複雑な日常生活機能の障害は軽度にとどまる」といわれています。
- 本人または家族から記憶障害の訴えがある
- 客観的に1つ以上の認知機能(記憶や見当識など)の障害が認められる
- 日常生活動作は正常である
- 年齢や教育レベルの影響のみでは説明できない記憶障害が存在する
- 認知症ではない
というものです。MCIを放置してしまうと認知症に移行してしまうとされており、それを未然に防ぐことが重要となります。
特に、十分な運動(有酸素運動)を行うこと、人とのコミュニケーションを多くとること、十分な食事を摂ること、認知課題(考えることを増やすこと)を行っていくとよいとされています。
おわりに
文中でもふれましたが、わが国では認知症の方が増えています。平均寿命が延びてきている一方で、健康寿命を延ばすことや認知症を防ぐこともリハビリテーション専門職の重要な課題であると考えます。
地域活動への参加が、今後ますます増えてくると思いますので、ぜひ積極的な予防活動を行っていくと社会への貢献になるのではないでしょうか。
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