注意(Attention)とは
ある物事や課題に対して、意識を向け続けたり、必要に応じて意識を切り替えたりする働きのことをいいます。注意の定義に関しては、心理学、神経科学など様々な分野で定義されています。
注意機能は脳の様々な部位が協力してその役割を担っており、脳卒中の方においては注意機能障害を呈していることも少なくはありません。
注意の種類
全般性注意
・持続性注意
ある対象に向けた注意を、一定強度で保持し続ける注意の働き
・選択性注意
多くの刺激の中から干渉刺激を抑制し、特定の刺激を選択して処理する働き(音声の選択的注意→カクテルパーティー効果)
・転換性注意
1つの課題に注意を保持している状態で、必要に応じて注意を向ける対象を変更する働き
・配分性注意
複数の課題に同時に注意を向ける機能のことであり、最も高次の注意機能
方向性注意
特に右側への意識、左側への意識といった方向性に対しての注意機能。これが障害されることで、半側空間無視が生じます。
注意障害
注意障害が生じることで、様々な症状がみられるようになります。例えば、人の話を聞いていない、何度も同じミスをする、物事に対して集中して取り組めなくなるといった症状がみられます。
では、先ほどの4つに分類された注意機能が障害されるとどうなるかをあげていきます。
持続性注意障害
この障害では、課題を途中で投げ出してしまうようないわゆる集中力が続かない状態。
例:課題中にキョロキョロしてしまい取り組むことができない
選択性注意障害
課題施行中に他の刺激に注意がそれてしまい、目的の行為が行えなくなるような状態。
例:課題をしている最中に誰かが通りがかるとそこに意識が向いてしまう
転換性注意障害
例えば、掃除中に来客があった場合に、一度中断して来客対応し、再度掃除に戻るといったことができなくなるような、注意の切り替えができなくなる状態。
配分性注意障害
食事の準備中にスープを火にかけて温まり具合に配慮しつつ、サラダ用の野菜を切るといった同時に作業を行うことが困難となる。
注意障害の臨床所見
集中が持続しない
- 注意散漫になりやすい
- 作業においてミスが多い
- 精神的に疲れやすい
- 2つのことを同時にできない(例:メモをとろうとしても、聞きながら書けない、書きながら聞けない)
- 1つのことを終えるのに時間がかかり、1つのことを最後までできない
- 大勢の前で名前を呼ばれても気づかないことがある
といった症状がみられれば、注意障害の可能性がありますので、評価を行う必要があります。基本的には、あらかじめ評価をしておいて注意障害の有無を判断しておくとよいでしょう。
注意障害の有無を評価するためには
机上検査
- Trail Making Test(TMTといい、TMT-AとTMT-Bがあります)
- Stroop Test
- 標準注意検査法(Clinical Assessment for Attention:CAT) など
行動検査
- Bevioral Assessment of Attentional Disturbance(BAAD)
- Rating Scale of Attentional Behavior(RSAB)など
評価の具体的な方法についてはいずれ更新できればと思います
方向性注意障害
多くは右側半分、左側半分といったように左右どちらからの視覚情報を処理することが出来ず、見えているはずの半分の空間を認識出来ないという症状がみられます。
このような左や右側半分の情報を見落としてしまう症状を半側空間無視といいます。
こちらについても別の機会に具体的な情報を提示する予定です。
おわりに
注意障害は脳卒中を発症した方の多くにみられる症状です。やる気が低下した、怒りやすくなったなどの症状は前頭葉機能症状でよく認められますが、注意機能にも相互関係を持ちますのでこれらについても評価を実施し、対象者がどのような高次脳機能障害を呈しているのかを把握しておく必要があります。