失行とは
経験や学習、社会的な習慣などによって身に付けた動作ができなくなる障害。
「麻痺、失調、不随意運動などの運動機能障害」、「感覚障害」、「失語症があって理解できないこと」、「視覚性失認などの認知機能障害があって、物をみても何だか分からないこと」のいずれによっても説明できないものをいいます。
代表的な失行の種類
- 観念失行
- 観念運動失行
- 肢節運動失行
- 構成失行
- 着衣失行
- 口腔顔面失行
- 拮抗性失行(少し特殊)
観念失行
使いなれているはずの道具の使用・日常の一連の動作を順序正しく行えないといった、物品使用の障害。
例:リモコンが操作できない、エレベーターのボタンを押して移動できない
観念運動失行
自発的にある運動を行うことができても、「○○してください」などと口頭で命令されたり、模倣するよう命令されたりするとできなくなってしまう。また、道具使用の身振りができなくなる。
例:バイバイがまねできない、道具を使わずに金づちを打っているまねの動作をしようとしてもできない
肢節運動失行
指先を使った細かい動作ができないといった、巧緻性の障害。
例:ピアノがスムーズに弾けなくなる、得意であった裁縫ができなくなる
構成失行
立体構成物の認識が上手く出来なくなる障害。
例:空間的構成(例えば積み木、パズル、図形の模写)ができない
着衣失行
衣服の上下や袖口などの認識があいまいとなり、スムーズに着替えることができなくなる。
例:ズボンを頭からかぶってしまう、袖口から手が出せない
口腔顔面失行
口(舌)や顔の動きが円滑でなくなる。
例:口笛をふけない、舌打ちができなくなる
拮抗失行
右手で随意運動を行う際,左手が意図に反して制御不能の動作をしてしまう(エイリアンハンドといいます)。
例:右手でボタンをはずしているのに、左手がボタンをはめようとする。
脳梁の障害で生じるといわれています。
失行の評価
標準高次動作性検査(Standard Performance Test for Apraxia:SPTA)
失行など高次の動作障害の検査であり、顔面動作、物品を使う顔面動作、上肢(片手)習慣的動作、上肢(片手)手指構成模倣、上肢(両手)客体のない動作、上肢(片手)連続的動作、上肢・着衣動作、上肢・物品を使う動作、上肢・系列的動作、下肢・物品を使う動作、上肢・描画(自発)、上肢・描画(模倣)、積木テストが含まれる。
日常生活上の動作を確認
どの高次脳機能障害にもいえることですが、日常生活の中で明らかに身体機能の影響ではない動作の困難さがみられる場合、何がどうできないのかを把握し、症状の鑑別を行う必要があります。
例:「リモコンでテレビやエアコンをつけることができない」、「歯ブラシで顔を磨いてしまう」、「服を着ようとしても着ることができない」、「口笛を吹く、舌打ちをするということができない」
認知症とは違う、日常生活上の動作への弊害や口頭指示に対応できないような通常とは違った反応が見られる場合には高次脳機能障害を疑ってもよいと思います。
おわりに
失行には様々な種類があります。脳の障害部位によっても出現する症状が変化しますし、失行を呈している症例は自覚症状がないこともあります。医療従事者は、きちんと脳画像を評価することでどのような高次脳機能障害が生じ得るのかということを予測しておかなければなりません。
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