転倒

評価法

転倒の定義

Gibson(1987)

「他人による外力、意識消失、突然の麻痺、てんかん発作によることなく、不注意によって人が同一平面あるいは低い平面へ倒れること」

大高ら(2006)

「歩行や行動時に意図せず躓いたり、滑ったりして、床・地面もしくはそれより低い位置に手やおしりなど身体の一部がついたすべての場合。けがの有無は関係ない。」

としており、意図せず倒れてしまうことを転倒と定義されています。

転倒の要因

内的要因

筋骨格系の機能低下

感覚系の機能低下

バランス機能低下

神経系の機能低下

視力障害

注意障害や記憶障害

転倒経験・転倒後恐怖感

内的要因は主に身体機能や認知機能、心理状況といった自己による影響のことを指します。

外的要因

電気機器のコード類

暗い部屋

じゅうたんやカーペットなどの柔らかい床

敷居などの小さな段差

脱げやすい靴やスリッパ

服薬状況(睡眠導入剤や副作用によるもの)

外的要因は主に住宅環境や靴を含む衣服、服薬などの外部環境から受ける要因のことを指します。

転倒が原因での骨折(いわゆる高齢者の4大骨折)

・大腿骨近位部骨折

・脊椎圧迫骨折

・上腕骨近位端骨折

・橈骨遠位端骨折

が主に高齢者の転倒を起因とした骨折であり、特に大腿骨近位部や脊椎圧迫骨折は入院リハビリテーションが必要となることが多いです。

回復期リハビリテーション病棟の対象疾患としては、大腿骨近位部骨折や脊椎圧迫骨折が当てはまります。上腕骨近位端骨折や橈骨遠位端骨折のみでは回復期リハビリテーション病棟へ入院してのリハビリテーションは残念ながら行えません。

それほど、大腿骨近位部骨折や脊椎圧迫骨折によって日常生活に支障をきたしてしまうと考えていただいてよいと思います。

転倒によって介護が必要になる可能性がある

厚生労働省が公開している「国民生活基礎調査」では、介護が必要となった主な原因を調査しています。

2019年度 厚生労働省 国民生活基礎調査より引用

介護や支援が必要となった主な原因

1位 認知症

2位 脳血管疾患

3位 高齢による衰弱

4位 骨折・転倒

4位ではありますが、転倒が原因で介護が必要となった方が多く存在しています。

過去の転倒歴に注意

転倒の要因という項目でも挙げましたが、転倒を引き起こす様々なリスク因子が存在します。その中でも過去の転倒歴については、相対危険度が約2~6と非常に高くなっています。

Tinetti ME et al: The patient who falls “It’s always a trade-off”.JAMA.303(3):258-266.2010

過去に転倒したことのある方というのは、完全な不注意でつまづいてしまったという方以外にも、身体機能の衰えや認知機能の影響によって転ぶべくして転んでしまったという方もいらっしゃいます。

後者の方においては、特に再転倒のリスクが高まりますので、リハビリテーション介入を行う際には受傷機転をしっかりと確認しておくことが重要です。

おわりに

幼少期はよく転び、ケガをしない方法を学びます。少しずつ転倒をせずに歩けるようになり、走れるようになってきます。しかしながら、加齢変化に伴い、徐々に身体機能や認知機能に低下がみられ、転倒へつながっていくのです。

特に近年の高齢者は、ひと昔前よりも若い方が多く、ご自身の身体の変化にも気づきにくいと思われます。

様々な場所で身体機能や認知機能が簡単に評価できる時代ですので、ご自身の客観的な状況を把握し、必要に応じて生活習慣や運動習慣の見直し、家屋環境を整えることを考えていく必要があると思います。

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